それは、忘年会シーズンの金曜の夜でした。会社の同僚たちと大いに盛り上がり、終電間際の電車に揺られて最寄り駅へ。ほろ酔い気分で自宅マンションのエントランスをくぐり、玄関ドアの前でポケットを探った瞬間、私の血の気は一気に引きました。あるはずの鍵が、どこにもないのです。コートのポケットも、カバンの内ポケットも、全て探しましたが、見つかりません。時刻はすでに深夜1時を過ぎています。家族は実家に帰省しており、部屋には誰もいません。パニックになった私が、最後の希望を託して電話をかけたのが、入居時にもらった書類に書いてあった「24時間緊急サポート」の番号でした。これが管理会社の連絡先だと信じて疑いませんでした。数回のコールの後、眠そうな声の男性が出ました。私は必死に状況を説明し、「マスターキーで開けていただけませんか」と懇願しました。しかし、返ってきたのは、「あー、申し訳ありませんが、お客様個人の鍵の紛失による開錠対応は、規定で行っておりません。お手数ですが、ご自身でインターネットなどでお近くの鍵屋さんをお探しいただけますでしょうか」という、無情で、しかし丁寧な言葉でした。電話を切った後、私はスマートフォンの小さな画面で必死に鍵屋を探しました。深夜料金で割増になるのは覚悟の上で、ようやく見つけた業者に依頼。結局、駆けつけてくれた作業員に三万円近い料金を支払い、自分の部屋に入れたのは、午前3時を過ぎた頃でした。凍えるような寒さの中で業者を待ったあの二時間は、本当に長く、心細いものでした。この経験を通じて、私は身をもって学びました。管理会社は、決して「万能の助っ人」ではないこと。そして、「自分の身は自分で守る」ための備え、例えばスペアキーを友人に預けておくといった、当たり前の予防策がいかに重要かということを。この苦い体験が、これから同じような状況に陥るかもしれない誰かの、一助となれば幸いです。
管理会社に電話した私の体験談「開けてくれませんでした」