省スペースで開閉が楽なことから、バリアフリーの観点やデザイン性の高さから、近年、住宅のトイレに「引き戸」を採用するケースが増えています。しかし、ここで一つ疑問が生じます。開き戸と違って、引き戸に鍵は取り付けられるのだろうか、そして、どのような種類の鍵があるのだろうか、ということです。結論から言えば、もちろん引き戸にも専用の鍵を取り付けることができます。引き戸用の鍵は、開き戸用のものとは構造が異なり、いくつかのタイプに分けられます。最もシンプルで一般的なのが、「鎌錠(かまじょう)」です。これは、施錠すると、鍵本体から鎌(フック)状のデッドボルトが飛び出し、柱側に取り付けた受け金具(ストライク)にがっちりと引っかかることで、戸が開かないようにする仕組みです。室内側にはサムターン(ツマミ)が付いており、室外側には使用中かどうかを示す表示窓と、非常開錠装置が付いた「表示鎌錠」が、トイレ用として広く使われています。デザインも様々で、戸の側面に埋め込むタイプや、戸の表面に取り付ける面付タイプなどがあります。次に、より簡易的なのが「引手一体型ロック」です。これは、引き戸を開閉するための引手(取っ手)そのものに、施錠機能が組み込まれているタイプです。引手の一部をスライドさせたり、ボタンを押したりすることで、ロックがかかる仕組みになっています。大掛かりな加工が不要で、後付けしやすいのがメリットですが、防犯性という点では鎌錠に劣るため、プライバシー確保を主目的とする室内のトイレなどに適しています。さらに、高齢者や車椅子を利用する方がいる家庭で便利なのが、「大型サムターン付きの鎌錠」です。サムターンの部分が大きく、レバー状になっているため、握力が弱い方でも軽い力で操作することができます。引き戸に鍵を取り付ける際に注意すべき点は、戸と柱の間に、鍵の部品が収まるだけの適切な隙間(チリ)が必要であることです。DIYで取り付ける場合は、この寸法を正確に測ることが成功の鍵となります。少しでも不安な場合は、専門の工務店や鍵業者に相談するのが確実です。適切な鍵を選ぶことで、引き戸のトイレは、さらに快適で安心な空間になるでしょう。