古い蔵や物置の奥で、忘れられたように鎮座するダイヤル式の金庫。あるいは、譲り受けたものの開け方がわからず、宝の持ち腐れになっている手提げ金庫。暗証番号はわかっているはずなのに、なぜか開かない。そんな経験はありませんか。ダイヤル式の鍵は、正しい手順で操作しなければ、たとえ番号が合っていても決して扉を開けてはくれません。ここでは、最も一般的とされる家庭用金庫のダイヤル操作の基本手順を、落ち着いて実践できるよう丁寧に解説します。まず、操作を始める前に最も大切なのは、焦らず、一つ一つの動作を正確に行うことです。ダイヤルを少しでも回しすぎたり、途中で回転方向を間違えたりすると、その時点で内部の機構はリセットされてしまうため、全ての操作を最初からやり直す必要があります。暗証番号が「右にA、左にB、右にC」だと仮定して、一般的な手順を見ていきましょう。最初のステップは、ダイヤル内部の機構をリセットするための準備運動です。まず、ダイヤルを「右方向(時計回り)」にゆっくりと4周以上回します。これは、内部にある複数の円盤状の部品(タンブラー)の位置を揃え、正確な入力ができる状態にするための重要な儀式です。この操作を省略すると、後続の操作が正しく認識されません。次に、そのまま右方向に回し続け、1番目の番号「A」が、金庫本体に刻まれた基準線(標線)にぴったりと重なるように止めます。この時、行き過ぎてしまったら、面倒でも必ず最初のリセット操作からやり直してください。2番目のステップは、ダイヤルを「左方向(反時計回り)」に回します。今度は、2番目の番号「B」を、基準線で2回通過させ、3回目にぴったりと合わせます。つまり、「Bを通り過ぎ(1回目)、もう一周してまたBを通り過ぎ(2回目)、さらにもう一周してきてBで止める」という動作です。回転方向が変わるため、特に慎重な操作が求められます。最後のステップです。再びダイヤルを「右方向(時計回り)」に回し、3番目の番号「C」を、基準線で1回通過させ、2回目にぴったりと合わせます。全ての番号が正しく入力されると、ダイヤルが特定の場所でカチッと止まるか、少し重くなるような感触があります。それが解錠の合図です。その後、レバーハンドルを操作するか、鍵を差し込んで回せば、重い扉が開くはずです。
ダイヤル式金庫の鍵開け基本手順を解説