近年、一般家庭でも急速に普及が進んでいる「スマートロック」。スマートフォンやICカードを使って玄関の鍵を開け閉めできるこの便利なツールが、実は、認知症の方の徘徊防止対策としても、大きな可能性を秘めていることをご存知でしょうか。スマートロックが持つ様々な機能は、従来の物理的な鍵だけでは実現できなかった、より柔軟で、より安心な見守りの形を提供してくれます。まず、スマートロックが徘徊防止に役立つ最大の機能が、「オートロック機能」です。ドアが閉まると、数秒後に自動的に施錠されるため、家族が鍵を閉め忘れるというヒューマンエラーを防ぎます。これにより、ご本人が「たまたま鍵が開いていたから外に出てしまった」という、最もありがちで、しかし最も危険な状況を未然に防ぐことができます。次に、非常に強力なのが「入退室履歴の通知機能」です。ドアが解錠されたり、開け閉めされたりすると、その履歴がリアルタイムで家族のスマートフォンに通知されます。これにより、たとえご本人が何らかの方法で鍵を開けて外に出てしまったとしても、その事実を即座に知ることができます。この「即時性」は、徘徊が長時間に及ぶのを防ぎ、早期発見・保護に繋がる、極めて重要な機能です。介護者が別の部屋にいたり、少し買い物に出たりしている間の出来事も見逃しません。さらに、製品によっては、「ハンズフリー解錠機能」をあえてオフにしたり、特定の時間帯(例えば深夜)はスマートフォンからの解錠リクエストを無効にしたり、といった細かい設定が可能です。また、家族それぞれが持つスマートフォンやICカードを個別に登録できるため、「誰が」ドアを開けたのかも記録されます。これにより、ご本人の行動パターンを把握し、今後の介護プランを立てる上での貴重な情報源とすることもできます。もちろん、スマートロックも万能ではありません。電池切れのリスクや、スマートフォンを持たない高齢の介護者には操作が難しいといった課題もあります。しかし、物理的な鍵による対策と組み合わせることで、スマートロックは、ご本人の安全を守り、介護者の精神的な負担を軽減するための、心強い味方となってくれるに違いありません。